Wuppertal 留学日記

2013年10月から1年間、交換留学でドイツへ行く機会に恵まれました。体験談などを書き残していきたいと思います。

55日目(11月24日 日) Munster Panzermuseum

Munster Panzermuseum

昨日はちらっと顔を出しただけで終わった戦車博物館ですが、この日は丸一日ここを見学するつもりでした。帰りの電車は1600過ぎでしたので、午前中から見学していれば4~5時間は確保できます。これだけあれば問題ありません。

ホテルで朝食を食べ、チェックアウトしようとしていたら支配人のような風格のおじさまが対応してくださいました。
「今日はもう帰られるのですか?」というようなことを聞かれたので、戦車博物館を見学する予定である旨を伝えたところ、「ああ、やはりそうでしたか」というような反応をされました。
なんでも、年間100,000人くらい(聞き取りが正しければ)の観光客が戦車博物館目当てでMunsterに訪れるらしいのです。特にアメリカからの観光客が多いそうですが、なんにせよ重要な観光資源となっているということでしょう。

ホテル側もそういった観光客の需要を熟知しているようでした。
実は、ホテル内にも戦車等々のプラモデルがあちこちに飾られており、またホテル内のテレビでもミリタリー系の番組を放送していたりしたのです(後者は偶然かもしれませんが)。街が戦車博物館をどう捉えているのかは分かりませんが、すくなくともホテルは一つの観光資源としてポジティブに捉えているようです。
第三帝国時代の戦車模型を飾るというのは少々危険なことであるような気もしますが、その辺はどうなのでしょう。

推測ですが、ムンスターだからこそ戦車の観光資源化が可能だったのではないかと思います。
ムンスターには戦車兵学校があり、つまり街と陸軍の距離が非常に近いのです。ですから、ムンスター市民からすれば戦車といってもさほど遠い世界の話ではなく、むしろ身近なものなのではないかと思います。したがって、街の紹介をする流れで戦車が登場したとしても違和感はなく、観光資源化をする際に歴史認識等々に過敏になることもなかったのではないでしょうか。


話を観光に戻しましょう。
昨日博物館からホテルまでの道は暗くて静かでただただ不気味だったのですが、朝改めて同じ道を歩いてみたところ、実はきれいな町であったということが分かりました。建物もこぢんまりしていてかわいいですし、池やなんかもあって広々しています。ただ、人が少ないことや静かすぎることも昼間であれば好意的に捉えられます。
また、この日は珍しく青空で、非常に気持ちの良い日でした。


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▲ムンスターの風景


さて、肝心の博物館ですが、今は「戦争とオモチャ」というテーマの特別展の期間中でしたので、それもついでに見ていくことにしました。木彫りの兵隊から、最近のテレビゲームソフトまでが展示対象とされていて面白かったです。
特に、ヒトラーユーゲントの人形の展示が目を引きました。


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ヒトラーユーゲントのオモチャ


戦後すぐに資料として確保されたのか、それとも一般人から提供されたのか分かりませんが、こんなデカデカとハーケンクロイツの旗を掲げた人形が現存しているというのは衝撃的です。

特別展コーナーと常設展コーナーは隣接しているため、そのまま常設展コーナーに進むことができます。常設展コーナー、というよりも格納庫といった方が実態に近いかもしれません。
とにかく広くてデカい建物がドカっとたっていて、その中に戦車がうじゃうじゃ展示されているのです。

博物館は12~2月の間は休館ということになっているのですが、その理由がここにきて分かりました。当初は改築でもするのだろうかと思っていたのですが、毎年同時期は休みらしいのでおそらくそうではありません。理由は気温です。格納庫内はほぼ外気温なのです。体裁としては一応建物の中なのですが、暖房器具の類は一切なく、ただただ寒いのです。我慢できないレベルではないのですが、真冬は無理でしょう。
ですので、ここを訪れる方は私のようにうっかりロッカーに上着を置いてきてしまったりせずに、身に着けて見学することをお勧めします。夏は問題ないかもしれませんけれど。

展示の並びは時代順です。
格納庫に入ってまず目に入るのは8.8cm高射砲と三号戦車のおしりです。
WW1[A7V]に始まり、戦間期~WW2としてドイツ戦車が網羅されています。WW1の展示は一角で終了なので、入ってすぐにWW2期の展示コーナーにたどり着くわけですが、ここが最初の展示にして最大の山場でしょう。


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▲A7Vのジオラマ 
側面から内部を覗くことができるようになっています。ちなみに前日に撮影したものです。


自分はこのコーナーに1~2時間くらいいましたが、好きな人なら一日ここで過ごせるのではないでしょうか。
私はティーガー1が大好きというミーハーな戦車ファンだったので、30分ほどティーガー1ばかり眺めていました。Panzermuseumというと戦車博物館と訳しがちですが、もしかすると戦車美術館ともいえるかもしれません。不謹慎かもしれませんが、美しさを感じました。


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ティーガー1

Ⅰ号~Ⅳ号までは、小さくてかわいいのですが、パンターから急にサイズがデカくなります。Ⅳ号までならそのあたりの駐車場に止まっていても違和感がなさそうです。

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▲Ⅳ号戦車 G型らしいです

戦車コーナーの次は突撃砲、自走榴弾砲といったものが一通り展示されていました。
ドイツ以外にもT-34やSU-100などのソ連車両もありました。

ここで時間を使いすぎてしまったため、少し焦りつつ次のコーナーである冷戦期~現代を見ることになりました。ここにくると、戦車も見慣れてしまって、「あぁまだあるのか」というような心境になってきました。
BMPやらT-72、はたまたレオパルドなど、初めて見る本物の車両に囲まれても感動が薄くなってくるのです。戦車だらけの環境に適応してしまったのでしょうか。冷静でいられるのはありがたいですが、何か勿体ないような気もしました。

それから、途中にはコブレンツに展示されていたような制服・小火器展示室もありました。

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ロンメル将軍のチュニック? とはてな付きで解説されていたので出所が定かではないのかな。

他には勲章の類も大量に飾られています。

最後の現代車両コーナーにはSタンクメルカバといった一風変わった車両も展示されていました。


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Sタンク


結局すべて見て回るのに5時間くらいかかったでしょうか。疲れた...

コブレンツは連邦軍の施設であったこともあってミュージアムショップは本屋というお堅いものでしたが、こちらは観光地ということもあってかもう少しやわらかい感じのミュージアムショップでした。
公式パンフレットといくつかお土産を買っていくつもりだったのですが、お土産は控えめなものが多かったです。日本の博物館・美術館のお土産というとノートやらクリアファイルやらといったものから模型、お饅頭といった類のものまで何でも揃っていて、「ここに金を落としていけ!」という意気込みが感じられることが多いです。
ところが、こちらに来てからまだそのようなミュージアムショップには出会っていません。少し物足りなさを感じるくらいです。

ここの博物館の職員の方は英語も堪能らしく、ドイツ語で話しかけたのにもかかわらず英語で返事が返ってきました。しつこくドイツ語を使いまくっていたら相手もドイツ語を使ってくれましたが、まだまだですね。
「イッヒ ヴェルデ ネヒスト ヤール ヒアー ヴィーダー コメン!」と約束して帰ってきました。


帰りはハノーファー経由のルートを使いましたが、またまた電車が遅れました。今回は10分程度だったので乗り換えがダメになるほどではありませんでしたけど。

そういえば、駅の案内の放送が聞き取れるようになってきました。往路で苦労したこともあって、注意して聞いていたのですが、自分の乗る予定の電車が遅れる旨も聞き取れましたし、また「次に来る電車は通過しますので気を付けてください」というような注意も何となく理解できました。
聞き逃すと帰れなくなる可能性さえあるリスニングテストのようなものですから、集中できたのかもしれません。


初一泊旅行でしたが、大きな問題もなく、楽しむことができました。また機を見て行ってみようと思います。