Wuppertal 留学日記

2013年10月から1年間、交換留学でドイツへ行く機会に恵まれました。体験談などを書き残していきたいと思います。

54日目(11月23日 土) 初一泊旅行

初一泊旅行

最近のルーチン化した日々から抜け出すべく、少し遠出をしてみることにしました。こちらにきてから日帰り旅行しかしたことがなかったので、今回は思い切って一泊です。まどかマギカのためにフランスまで一泊旅行する方たちがいるということを知って触発されました。家に閉じこもっていてはもったいないですよね。

とはいえ、思い立ってからわずか数日でまともな計画ができるはずもなく、見切り発車的な旅になりそうでした。
最近はウェブ上で簡単に宿も予約できますし、電車の時間もいくらでも調べられるため、まず困ることはないのですが、それでも不安になってしまいます。私は事前に綿密に計画しないと旅行できないような臆病な性格の持ち主なので前日の夜中まで色々調べていました。調べても結局適当に旅をしたりすることもあるのですが、なぜか家を出るまでは心配が尽きないのです。おかげさまで布団に入ったのが0200時過ぎという、明日から出かけるとは思えないような時間になってしまいました。

それもあって、朝は余裕をもって10時前くらいの電車に乗ることにしていました。これなら多少寝坊しても大丈夫というわけです。ところが、予想を上回る寝坊をしてしまい、いきなり駅までダッシュする羽目になりました。

何とか間に合ったものの、朝食を食べ忘れましたし、いきなり疲れ果てました。目的地までは2回(ドルトムントブレーメン)乗り換える必要があったため、まぁ乗り換えの隙間に何か買えばいいか、と思っていたのですが、どうも乗っている電車が少し遅れているようです。到着予定時刻を過ぎてもまだ最初の乗り換え地点であるドルトムントにたどり着きません。
これじゃあ朝食が食べれないどころか乗り換え失敗の可能性もあるぞ...と思い、到着後あわてて乗り換え先のプラットフォームへ走ったのですが、電光掲示板には既にその電車の情報が出ていませんでした。
これはやってしまったか...と思ったのですが、どうも変です。乗り遅れたにしても、出発予定時刻1,2分後でしたので、電車の姿が見えてもおかしくないはずだったのですが、先ほど電車が出発した気配が一切しなかったのです。プラットフォームにも待っている人が溜まっていましたし。

あわてて調べてみたところ、乗り換える予定だった電車の方も20分ほど遅れているということが分かりました。ラッキー!と思い、のんびり朝食を食べてプラットフォームに戻ったのですが、予定時刻を過ぎても電車は一向にやってきません。何かおかしいと思い、再度調べてみたところ、さらに遅れているようなのです。なんと本来の予定から45分も遅れているというのです。これではこの次の乗り換えに支障が出ます。

ドイツの電車は10~20分余裕で遅れてくる、というのは経験則として知っていたので、それも見越して次の地点では30分ほど余裕をもった乗り換え時間を設定していましたが、まさかのその余白を上回る遅れです。その場で乗り換え計画が瓦解しました。
しかも、今回の目的地は田舎町だったため、次の電車を待つとなると到着時刻に一時間以上影響します。予備のプランも調べてあったので何とかなるにはなるのですが、なんだかやりきれません。

しかし、悔しがったところでどうしようもないので、気を取り直して次の乗り換え地点で少し観光していくことにして、おとなしく電車を待つことにしました。すると、しばらくしてアナウンスが入りました。「電車がそろそろ到着する」ということに加えてもう一つ何かいっていたのですが、聞き取れませんでした。ただ、周りの人がぞろぞろ移動を始めたのです。
電光掲示板を確認してみると、プラットフォームが変更になったようなのです。
45分遅れてきた上にプラットフォーム変更とは、なかなかスリリングです。日本のダイヤの正確さをここにきて改めて思い知りました。JR恐るべしですね。

なんにせよ、とりあえず乗り換えられてよかったです。このプラットフォーム情報を見逃していたら今日中に目的地にたどり着けず、終わっていたかもしれません。

次の乗り換え地点であるブレーメンには結局1時間弱遅れて到着しました。目的地までの電車を調べなおしてみたところ、1時間30分も余裕がありました。どうやら到着は夕方になりそうです。ですが、ブレーメンで余裕ができたのは天佑というべきかもしれません。
なぜなら、誰もが知っている観光名所があるからです。そうです。「ブレーメンの音楽隊像」です。
もしドルトムントで1時間待つことになっていたらすることがなくなっていた気がします。

ブレーメンの音楽隊は「Stadtmusikanten(街の音楽家)」と呼ばれています。ブレーメンの街には、あちこちに「Stadtmusikanten →」というような看板が立っており、観光地図の類を一切持っていなかったとしても迷うことはありません。

また、街並みもきれいで、単に徘徊しているだけでも十分楽しむことができます。

Wuppertalもきれいな街だと思っていたのですが、実はドイツ人の間では評判が悪いらしいです。先日VISA申請でいろいろ助けてくれたドイツ人学生さんがそんなことを言っていました。
「Wuppertalってなかなかきれいな街ですよね」と話しかけたら「正気か!?」というような反応をされました。「もっと他の街を見てきた方が良い!Wuppertalは駅前のゴチャゴチャした汚さから、ワースト1とも言われているんだから!」というのです。

確かにコブレンツに行った際はWuppertalをしのぐ美しさを感じました。ブレーメンはそれ以上です。旅行すればするほどWuppertalが小汚く見えるようになりそうで末恐ろしいですね。

ブレーメンは街に非常に活気があります。観光名所であることがそうさせているのだとは思いますが、町全体がヨーロッパを演出しているような雰囲気です。
建物や石畳はもちろんのこと、ストリートミュージシャンも一味違います。Wuppertalのストリートミュージシャンはレッドツェッペリンの「天国への階段」などのロック系を弾き語りしていることが多いのです。
ところがブレーメンでは、ナブッコの「行け我が思いよ~」や魔笛の「おいらは鳥刺し」なんかが演奏されており、ここは欧州ですよー!と全力で主張してくるのです。楽器もギターだけでなく、何かよく分からない笛やアコーディオンなど色々でした。
他にも民族衣装を着たおじさんが歩いていたり、何かとにぎやかなのです。「わざとらしい」「キッチュだ」といわれればそれまでかもしれませんが、観光として訪れる際にはそういう演出にもウキウキさせられるものです。

そういえば、石造マンもいました。正確な呼称は知らないのですが、全身を白く塗って台の上に乗って固まっているパフォーマーです。

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▲不気味な像だなぁと思って写真を撮ろうとしたらいきなりピースされてびっくりしてブレブレになった写真。「うわっ」と声に出して驚いたのは久しぶりでした。

肝心のStadtmusikantenは市庁舎の前に控えめに立っていました。
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▲ロバの足がテカテカになっているのは、触ると幸せになれるといわれているからです。ドイツのビリケンと考えれば分かりやすいかもしれません。

音楽隊の周りには、記念撮影の順番待ちの列ができており、2~3人で行かない限りちょっと近づきがたいオーラがあります。この写真は観光客が少ない隙を狙って撮りました。ついでに隙を狙って足も触ってきました。

そんなことをしていたら程よい時間になりました。いよいよ目的地に向かって移動です。ブレーメンからはerxというローカル線めいた電車で向かうことになります。電車に揺られること1時間30分、ついに目的地にたどり着きました。

目的地は「ムンスター(Munster)」です。Wuppertalの属するノルトライン=ヴェストファーレン州には「ミュンスター(Münster)」という街がありますが、そっちではありません。ウムラウトがない方、ニーダーザクセン州の片田舎「ムンスター」です。
電車の駅は「Munster(Örtze)」という名前でした。

この街には、その方面では有名な「戦車博物館」があるのです。ここにはかねてから一度行ってみたいと思っていました。念願叶って、ついにやってきたのです!
が、到着したのは16時30分、博物館は18時までしか開いていないため、この日はちょっと顔を出しただけで終わってしまいました。それでも大興奮でしたが、書き出すと長くなりそうなのでやめておきます。これについてはまた特集記事を書くつもりです。

ちなみに、ミリタリー色の強いところばかり巡っていますが、これは単に趣味で...という側面ももちろんありますが、一方では卒業研究の材料集めという性格も持っています。目的の③の項で記述した通り、こういった施設からもドイツ人の戦争観をうかがい知ることができるのではないかと考えているわけです。ですから、ただ遊んでいるわけではないのです。
写真を撮ってくることも、パンフレットを買ってくることも、街の様子をあれこれ見てくることも、実は勉強だったのです。
さらに、目的②で記述したような"意外なこと"と出会うためにも、やはり旅という手段が手っ取り早いわけです。今回でいえば、電車が45分遅れてくるという事態は私にとって一つの大きな意外なことでした。これもまた、柔軟な対応力を養う訓練であったというわけです。
...などという名分で自分を納得させつつ、今後も楽しみながらこういった施設を巡る予定であります。(実際は現地に着いたら「うひょー本物のティーガー戦車だ!Ⅰ号からⅥ号まで勢ぞろいしとる!たまらん!」などと興奮しっぱなしでそれどころじゃなかったのですが。)

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▲夜の戦車博物館

さて、18時といえどあたりは真っ暗です。街頭もぽつぽつあるのですが、大して明るくありません。もうちょっと頑張ってほしいところです。宿は博物館から徒歩15分ほどのところだったのですが、あまりの暗さに恐怖していました。暴漢に襲われるとかそういう恐怖は一切なかったのですが、チュパカブラとかカエル男とかモスマンとか、そういうUMAの類でも出てきそうな静けさでした。大体宇宙人とかUMAの情報はアメリカか欧州発なので、雰囲気満点でした。
そこらじゅうに民家があるというのに、一切生活音がしないのです。ちょっとしたホラーです。

宿の予約はBooking.comというwebサイトを利用しました。ムンスターの宿を予約できるwebサイトはこれくらいしか見つからなかったのです。webサイト上で恐ろしいほど簡単に手続きできてしまったので、本当に予約できているのか不安だったのですが、問題なく手続きが行われていました。

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▲Deutsches Haus Munster

宿はレストランと一体化したような立派なところでした。実はドイツに来てからまだしっかりしたレストランで食事をしたことがありませんでした。お高いと聞いていたこともあって敬遠していたのですが、せっかくの機会なので利用してみることにしました。
ついでに見慣れないビールもあったので注文してみることに。

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▲夕食一式で23ユーロくらいでした...なんという豪遊

ドイツではお会計は食事をした席で支払います。以前Mさんと一緒にモーゼル川沿いのカフェで食事をした時に、チップ(ドイツではTrinkgeld[飲み物代]というようです)のことと併せて教わりました。その辺のこともこちらに来てからまともに経験していませんでした。チップはウェイター / ウェイトレスに対して支払うものなので、いつも売店でDönerばかりの私はチップ文化にもまだまだ慣れていないのです。お財布的には大打撃でしたが、新鮮な経験ができました。
Jさんに教わった「Danke für das Essen」も早速役に立ちましたし、ドイツ語の実践演習にもなりました。こういう場でいろいろ話してみた方が、会話力は身につきそうですね。

なんだかんだでこの日はブレーメン観光がメインイベントになってしまったわけですが、上記のように楽しく過ごすことができました。

というわけで、博物館についての詳しいお話はまた明日。