Wuppertal 留学日記

2013年10月から1年間、交換留学でドイツへ行く機会に恵まれました。体験談などを書き残していきたいと思います。

191日目(4月9日 水) イギリス旅行 その6 ~London滞在1~

ロンドン観光 ~衛兵交代 → 市内一周 → 観劇~


いつまでイギリス旅行をしとるんだ私は。
今週中には日記を片付けます。いつも写真を見て思い出しながら書いていましたが、すでに帰国後ひと月以上経過していることもあって記憶の鮮度が失われつつあります。

鮮度が失われ、思い出補正がかかっている可能性の高い記事を偉そうに自分の体験談としてブログなんぞにまとめて公開するのは、有益どころかむしろ害悪なのでは。そもそも、海外生活の体験談をまとめたとは言っても、結局のところ主観に基づく判断が随所に含まれているのは致し方ないことで、それを今後留学する方のため云々...といって書き残しているのはいかにも傲慢な気がしてきました。すでに開始してからしばらく経ってしまったので、惰性で帰国まで続けようとは思いますが、なんだかなぁ。

アレですよ。全く同じ体験をしたとしても感じ方は当然ながら人それぞれです。「○○は□□だった」などという書き方をしていてもあくまで「私の眼にはこう映った」というだけの話ですから、あまり真に受けないでください。

帰国後もきっとあれこれ友人知人に話をする機会があると思いますが、自分のフィルターを介して濁りきった体験談しかお話しできません。見たまんま純度100%の情報を残すことなど不可能です。
ですから、興味があるのであれば自分でそこへ行って、自分のフィルターを通して物事を見て、自分なりの感想を抱くべきなのだと思います。

帰国後あれこれ尋ねられ、それにこたえる形で自分なりの感想を話して他人にまで妙な偏見を抱かせてしまっては不本意の極みです。かくなる上は、「興味があるのなら自分で見に行きたまえ」と答えるだけのbotと化す予定ですのでどうぞよろしく。(挨拶)




さて、この日は先日見逃してしまった衛兵交代見学のリベンジからスタートしました。前回時間を確認できたうえに地下鉄も一度経験して慣れたこともあり、スムーズにホテルからバッキンガムまでたどり着くことができました。

ところが、もう言葉では表現できないほどに人!人!人!という有様で、大英帝国のメインコンテンツの集客力を思い知らされました。

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▲ご覧の通りです。


今月の写真アップロード容量が既に限界値スレスレなので、節約ということで衛兵の写真は貼りません。つきましては、各自でググっていただきますよう。

バッキンガムの門の付近までモゾモゾと辿りついたのですが、人垣の隙間から覗き込む形での見学になりました。それでも衛兵交代は眺めることができたのでよかったのですが、最前列で見たい!とかこだわりがある方は開始20~30分前にはバッキンガム周辺で身構えていた方が良いかもしれません。


おお!と思ったのは、警官の客捌きのうまさです。

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▲"警官"といっても整理のために派遣されてきた哀れな交通課職員...といった雰囲気ではなく、白馬に乗った凛々しい方々で、衛兵交代というイベントの一部として溶け込んでいます。


そして、写真のようにビシッ!と大きく分かりやすい身振り手振りを交えて、ハキハキとした発音、かつ単純で分かりやすい単語を使ってお客さんたちに指示を出すのです。

「そこ(指を指しつつ)の方々、少し下がって!」

とサッと指示を出し、お客さんが指示に従って動くと「それでよし!ありがとう!」と颯爽と去っていきます。ハッキリと指示を出すため、やや威圧的に感じたのですが、去り際のケアといいますか、一言添えてくださるおかげで気持ちよく見学できます。

衛兵交代ももちろん印象的なのですが、なんだかこの警官の姿の方が印象に残りました。ゆえに、少ない容量を削って写真を貼らせていただきました。



ところで、私は英国に対してある種のステレオタイプを持っていました。

欧州圏内とはいえ島国である点、プロムスのような愛国的イベントが大々的に継続して行われている点、また現代の言語界の支配者である英語を母語としている点から、排他的な風土を持ち合わせているのではないかと考えていたのです。が、邪推でした。

何よりまず非常に多国籍で、ロンドンを歩いていると英語の他にもフランス語、中国語、そしてドイツ語など、様々な言語があちこちから聞こえてきました。同じ島国であっても、日本とはだいぶ様子が異なっています。

また、宿やお店、駅などで正確とはいえない英語で質問をしたりしても、嫌な顔をされるどころか懇切丁寧に説明していただくことができました。英語圏に留学した友人たちが「空港や駅で問い合わせをすると「君の英語は分かりにくいから英語が話せる人間を連れてきてくれ」と突っぱねられることがある」と話していたのでおびえていたのですが、少なくとも今回の旅行中にそのようなことはありませんでした。英語圏の国すべてがそのような風土を持ち合わせているというわけではなさそうです。たった一週間の滞在では何も断言できませんが、それでも当初のステレオタイプは薄まりました。

衛兵交代にも、ナショナリスティックな雰囲気はほとんど見てとることができませんでした。訪れたのが春休み時期だったためか、とんでもない数の観光客がバッキンガム周辺にあふれており、荘厳さや厳格さの代わりに、観光客のざわめきと無秩序さが目立ってしまっていました。もう少しピリピリした雰囲気を想像していたため拍子抜けでした。

近くにいたフランス語を話す集団は、衛兵が目の前までやってきても延々お喋りしていましたし、女王陛下の威信はどこへやらという感じです。むしろ、こうした親しみやすい雰囲気が強みなのかもしれませんが、とにかく色々思うところはありました。


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▲宮殿上にはためくユニオンジャック


また、英国の象徴であるユニオンジャックも、バッキンガム宮殿を始めとしてあちこちで見かけることができましたが、こちらからもナショナリスティックな香りは感じませんでした。どちらかというと、観光資源としてあちこちでデザインが利用されているように見受けられました。

ロンドンには「Cool Britannia」というお土産ショップがあちこちに存在しているのですが、そこを訪れてあれこれ見ていると、ユニオンジャックも衛兵も完全に観光資源としてコンテンツ化されてしまっているかのような印象を受けました。

日本で日章旗をデザインしたお土産を扱っているのは今まで靖国神社遊就館くらいしか見たことがないような気がします。日本では日章旗がはためいていると、どこかナショナリスティックな雰囲気を感じますが、それは街宣車等々の影響なのでしょうか。戦勝国であるイギリスこそ、国家や王室を正々堂々国家の象徴として扱うことができる文脈と権利を持っていると思うのですが、かえってポップな存在に見えてしまうのが不思議なところです。

ちなみに、Cool Britanniaという店舗名は愛国歌「Rule Britannia」のパロディかと思ったのですが、90年代以降の新たなスタイルのロンドン文化を表す造語として一世を風靡した言葉だったようです。知りませんでした。


衛兵交代見学後は、ロンドンの街並みを見てみてかったため、中心地に向かってうろうろしてみました。


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▲レスタースクエア


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▲有名なピカデリー


It's a long way to Tipperaryという、アイルランドから出てきた若者がロンドンの豪華絢爛さに度肝を抜かれるという歌のサビ部分でここがでてくるのですが、それをいつか見てみたいと思っていました。


いつかはります
▲夜の風景


レスタースクエアからピカデリーまでは徒歩5分もかからないくらいなのですが、ここら一帯の賑やかさは凄まじいです。ロンドンの街並みはここだけでなく、どこもかしこもきらびやかなのですが、建物の外観もドイツとはまた異なっていたため、散歩をしているだけでも見飽きることはありませんでした。

やたら目についたのは劇場です。ドイツには一つの街に一つ劇場があるといったふうに、劇場が不可欠な施設となっていますが、ロンドンの中心街には2ブロック毎に一つというくらいの割合で、劇場と映画館が乱立しています。ドイツの状況にも驚きだったのですが、ロンドンには圧倒されました。劇場に併せてチケット売り場もあちこちに存在しており、観劇文化が街の中心に存在しているようでした。

レスタースクエアには大きなチケットショップがあり、ここでロンドン市内すべての劇場のチケットを購入することができます。

そこら中にチケットショップが存在してはいるのですが、おそらくここが一番信頼できるのではないでしょうか。別のチケット屋より若干安かったですし、しっかりしています。

ガイドブックにて、ミュージカルが有名との情報を得ていたので、せっかくなら何か見ていこうと思い、「レ・ミゼラブル」を見てきました。一時期前にミュージカル映画が公開されて話題になっていましたが、その際に見逃していたため今回が初観劇でした。すべてを聞き取ることはできませんでしたが、半分は聞き取りから、残りの半分は演者の動きから内容を理解する形で楽しむことができました。

劇場には仕事帰り風の人からしっかり着飾った人まで色々なタイプの人がおり、観劇が特定の階層の特権的趣味ではないことがうかがえます。

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▲クイーンズシアター

オペラは何度か見たことがありましたが、ミュージカルはもしかしたらこれが初めてだったかもしれません。ミュージカルにはセリフパートがあるものと思っていたのですが、ミゼラブルは常に音楽にのせてストーリーが進行するんですね。

最初の銀の燭台のエピソードで「ああ、これが」と思って以降は、やや盛り上がりがなく退屈に感じ始めていたのですが、決起集会?のシーンからの盛り上がりは凄まじかったです。「フランス革命関連のお話」という程度の事前知識しか持ち合わせていない初見でも楽しむことができました。

帰国後にYoutubeやら何やらで調べて見返しているうちに、全編通して気に入ってしまい、もう一度見に行きたい気持ちに駆られています。

それにしても、午前中はバッキンガム宮殿で国家的イベントを見て、午後は劇場で革命劇を見ることができるというのは面白い文化です。ステキ。