Wuppertal 留学日記

2013年10月から1年間、交換留学でドイツへ行く機会に恵まれました。体験談などを書き残していきたいと思います。

123日目(1月31日 金) Deutschesmuseum ドイツ博物館

Deutschesmuseum ドイツ博物館

さて、本来ならば今日はニュルンベルクへ向かい、Spielwarenmesseという"おもちゃ見本市"を見に行こうと思っていたのですが、先日分の記事に書いた通り一般人の見学不可であることを失念していたため計画を変更しました。

ミュンヘンには「ドイツ博物館」という巨大な博物館があります。通常の博物館であれば、例えば「オルゴール博物館」だとか「ペンギン博物館」だとかいった具合に、主要展示物の名を冠していることが多いと思います。その例に倣うならば、この博物館に展示されているのは「ドイツ」そのものというとんでもないことになってしまうのですが、これがあながち間違いでもないのです。

ここには、ドイツが開発した技術・機械・車両・航空機といった様々なものが集められているのです。したがって、展示物のジャンルは一つに絞られません。私の目的はある航空機だったのですが、それ以外にもうじゃうじゃ展示物がありました。

この博物館は、ミュンヘン中央市街からやや東へ行ったところ、イザール川の中州にあります。私は、街中を観光する際は「街並みを眺めたい」「見知らぬ土地でローカル公共交通機関を利用するのがコワイ」という二つの理由から極力徒歩移動を心がけているのですが、今回の目的地は思ったより遠く、難儀しました。

到着したのは路面電車の駅がある、正門と思しき場所だったのですが、どうも門が閉まっているように見受けられます。これはまさか休館日か?Remagenでの悲劇再来か?とじんわりと焦りを感じていたのですが、路面電車から降りた人たちを見ていると川沿いにずんずん進んでいくではありませんか。入口はこの先ってこと?と思い、人の流れについて行ったら本当の正門がありました。困ったら長いものに巻かれておけば大体間違いはないということですね。

そんなわけで無事館内に入ることができたのですが、館内は尋常じゃない広さです。博物館へ来たら、展示者の意図に沿って順路通りに1から順に見ていくようにしているのですが、今回はすべて見切ることは不可能だと早々に諦め、まずは目的物から見に行くことにしました。


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▲Me262


ドイツ初にして世界初のジェット戦闘機、メッサーシュミットMe262です。
小学生の頃に乗り物の類が大好きだった私は、飛行機図鑑という古今東西の飛行機の絵が描かれた本を好んで読んでいたのですが、その中に「橘花」という日本のジェット戦闘機の絵が描かれていました。その後になってMe262のことを知った私は、「あ、これ橘花にそっくり!」とはしゃいでいたのですが、Me262が橘花にそっくりなのではなくて、橘花がMe262にそっくりなのです。というのも、ドイツのMe262をもとに開発されたのが日本の橘花だったのでした。
そんなわけで、幼い日のかわいい勘違い?が思い出深いMe262をこうして初めて目にすることができたのでした。

思ったより小さい、というのが第一印象でした。近場にF-104やら、戦後の機体が並んでいたために比較して小さく見えたのかもしれませんが。

ちなみに、Me262の上にはV1ロケットとMe163コメートが吊るされていました。

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▲Me163コメート

Me163を見て「あ、これ秋水にそっくり!」と小学生当時の私は思ったものですが(嘘)、そうではなくて秋水がMe163にそっくりなのです。というのも、ドイツのMe163をもとに(ry

Me163は変わった航空機で、離陸時には着脱式の車輪を利用し、離陸と同時に車輪を切り離します。その車輪も展示されていました。
その後上空で戦闘できるのは10分にも満たないほどの短時間なのですが、それが終わったら燃料が切れてグライダーと化します。しかも、車輪は離陸時に捨ててきました。じゃあ、どうするの?というわけなのですが、機体下のスキーで着陸するのだそうです。
しかも、黎明期のジェット機ということで、燃料やら何やらの安全性も著しく低く、パイロットはアスベストで加工された防火服を着ていたらしいです。ヒストリーチャンネルがそう言っていました。

何故こんなわけのわからん戦闘機が必要になったのかというと、戦争末期で防戦一方になったドイツには連合国側の爆撃機が攻撃を仕掛けてくるわけです。その爆撃機は、通常の戦闘機では軽々と上昇できないような高高度を悠々と飛行してくるのです。つまり、一方的にやられるしかなくなってしまうわけですが、そんなときにコメートの出番。
自慢のジェットエンジンでさっそうと敵爆撃機のいる高高度に上がり、短時間の間に大口径の機関砲で爆撃機を粉砕、片付いたら悠々と滑空して基地付近に着陸、というわけです。
が、まさかそんなうまく事が運ぶわけもなく、華々しい活躍をしたということはないようです。

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▲V1ロケット

V1のVは「Vergeltung(報復)」の意ですので、これは報復兵器1号です。
V1ロケットは現代の巡航ミサイルの原型になった兵器として大いに有名です。大戦中はドイツからロンドンに向けてガンガン撃ち込まれていたそうです。

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V2ロケット

付近にはV2ロケットも展示されていました。展示方法が面白く、螺旋階段の真ん中にどーんと置かれています。ミサイルサイロ的な雰囲気が醸し出されていてステキ。あまりいい写真がなかったので申し訳ないのですが、遠くから全体を収めた写真は撮れない構造になっています。
V2は現代の弾道ミサイルの原型になった兵器として有名です。先日訪れたRemagenの橋を落とすためにも何発か撃ち込まれたらしいですね。

1、2とくればV3といいたいところですが、V3は実用化されずに終わりました。1、2はロケットだったのにもかかわらず、V3はそれまでと趣向が異なり、ざっくりいえば巨大な大砲といった感じの兵器でした。これで直接ロンドンに砲弾を撃ち込んでやろう!というわけです。

V1、V2はどちらも現代に別の形で生き残っています。もしV3がうまいこと機能してしまっていたら、それを原型に何か不気味な兵器が生まれていたりしたのでしょうか。

末期のドイツがあれこれ試行錯誤して作ったものが、いろんな形で戦後の技術に影響を与えてきたわけですね。

他にはJu52、Bf109、ライト兄弟のライトフライヤーだとか、フォッカーだとか、航空機系はそんな感じのものが展示されていました。

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▲Bf109

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▲Ju52

私の趣味のものにばかりフォーカスしてきましたが、他にも、潜水艦、船、発電機、おもちゃ、コンピュータ、カメラ、衛星、楽器などなど、書ききれないほどのものが展示されていました。

例えばこんなものも...

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グーテンベルクの印刷機

グーテンベルクといえば、あの世界史で出てくる活版印刷の人です。まさかこんなものまであるとは。

共通の興味がない複数人で遊びに行ったとしても、各々がそれぞれ自分の趣味にまつわる展示を見ることができるという不思議スポットです。
ミュンヘンを訪れる際はぜひ。

結局ここで一日潰してしまい、その後は慌てて市街に戻り、小ぶりなおもちゃ博物館(5分で見終えられるほど小さい)を見学したりして夕食時を待ちました。

晩御飯はHofbräuhausというビアホールへ行ってみるつもりでした。
ここは、かなり歴史のあるビアホールで、モーツァルトやレーニンが訪れたこともあるのだそうです。そしてなんと、ヒトラーが政治集会を開いた場所としても有名というではありませんか。
一人でビアホールというのも何か気が引けたのですが、これだけ歴史が詰まっていると、行かないわけにはいきません。

ビアホールは想像通りのビアホールでした。陽気なおじさんたちが歌っていたり、何とも賑やかでした。ビールは例によってあれこれ種類があるのですが、Hofbräu originalというオリジナルブランドっぽいものを注文しました。アルコールに弱い上にお酒に詳しくない私は、正直なところビールなんぞより牛乳でも提供してくれた方が嬉しいのですが、ミュンヘン滞在中は努めてビールを飲むことにしていました。

ビアホールのビールはデカいのです。黙って注文すると1ℓです。さすがにそんな飲めるはずもなく、「小さいのありますか?」と尋ねてみたのですが「小さいとなるとハーフだね」とのこと。つまり最小単位500mℓなのです。
500mℓも飲めるわけないじゃないか...と思いつつも最小単位なのでそれを注文しました。ところが、このHofbräuoriginalのおいしいことおいしいこと!水のようなさらさらしたのど越しに加え、どこか甘味を含んだ味。今まで飲んできたビールすべてを超越したビールでした。(おそらく70%はプラシーボによるものでしょうけれど)

また、ミュンヘンは白ソーセージが有名です。それも併せて試してみました。

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▲メニュー表紙

メニューの真ん中にナメクジとも蛆虫ともつかぬ物体が跋扈していますが、これが多分白ソーセージを表しています。絵で描かれると不気味過ぎますが、表紙にも載っちゃうほど名物なのですね。

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▲白ソーセージ

白ソーセージは甘いマスタードをつけて食べるのが流儀なのだそうです。マスタードなのに甘いなんて存在意義が否定されている感じのかわいそうな調味料なのですが、これがまたおいしかったです。ソーセージは食べ飽きたと思っていたのですが、新鮮な味でした。ミュンヘンでしか食べられないというのが惜しい!

程よく酔っぱらったら帰ってすぐに寝てしまいました。いい気なものです。