Wuppertal 留学日記

2013年10月から1年間、交換留学でドイツへ行く機会に恵まれました。体験談などを書き残していきたいと思います。

52日目(11月21日 木) ビザ申請手続き(その1)とアニメ会

ビザ申請手続き(その1)とアニメ会


今日は他の日本人学生たちとビザ申請のための事前手続きに行くことになっていました。
それもあって、授業後一人であわててご飯を食べていたら「あれ?君は同じクラスの○○じゃん」みたいな感じで、一緒に授業を受けている学生さんが話しかけてきてくれました。「隣いいかい?」というセリフとともに。
これです!この、相手のパーソナルスペースにスッと入ることができる欧州式交流術です!しかも、その人とはほとんど今まで話したことがなかったのです。なるべく積極的に話しかけたりするようにはしているのですが、ここまでの気さくさは真似できません。

その人とはドイツ語でやりとりしていたのですが、スムーズにコミュニケーションできませんでした。
それでも「楽しかったわ!また一緒にご飯食べようね」といってお別れしてくれるのです。何この優しさ!?怖いくらいです。これも隣人愛精神でしょうか。器が大きすぎます。


というわけで本題です。
手続きには、こちらのドイツ人の学生さんがついてきてくれることになっていました。
これも他大学の協定に半分便乗したことによって得られた恩恵です。
自分でやれよ!と突っ込まれてしまいそうですが、ビザとなると住民登録ほど簡単ではないでしょうし、また何か問題があった際に対処できないと大事になるかもしれないという不安があったため、一緒に連れて行ってもらうことにしました。

こちらに来ている日本人がぞろぞろ集まったのですが、初対面の人もいました。てっきり先日のTee Partyの場で全員と顔合わせをしたのかと思っていたので驚きました。

今回は外国人局(Ausländerbehörde)へ行くことになっていました。これは、Wuppertalの中でもBarmenという地区に位置しており、大学からは電車で2駅くらいの距離があります。

[Ausländerbehörde]
An der Bergbahn 33 42289 Wuppertal
時間は予約次第?

手続きはかなり複雑かつ煩雑です。一通り必要書類を揃え、外国人局に提出すれば終わりかと思いきや、実際の手続き日の前に一度外国人局を訪れ、写真の提出と指紋を控えなければならないのです。今日はこの写真撮影と指紋の控えを取るために集まりました。ゆえに(その1)なのです。
つまり、何も問題がなかったとしてももう一度ここを訪れなければならないわけです。

ちなみに本手続の日程は事前にオンラインで予約してありました。完全予約制なのです。

手続きですが、同伴してくださったドイツ人の学生さんがドイツ語→英語に翻訳してくれることになっていました。それだけ複雑な話をされるということでしょう。

お役所恒例の待合番号札を与えられ、しばらく待っていると以外にも早く順番が回ってきました。オフィスに入ったら
・パスポートの提示
・身長が何センチかという質問に答える
・指紋を機械で読み取る
という三つのプロセスを経て解放されました。いきなり身長を聞かれたのでびっくりしました。
「Wie Groß?」などと言われたのですが、これで身長を尋ねることになるらしいです。最初は年齢かと思いました。英語では「How big?」にあたります。

それ以外には戸惑うこともなく、5分足らずで手続き終了です。あら簡単!と思っていたのですが、その後オフィスへ入っていった人たちがなかなか帰ってきません。どうやら問題発生らしいです。
実はその後で状況を説明していただいたのですが、それでも何が問題だったのかよく分かりませんでした。聞き取れた部分から推測すると、住民登録局から外国人登録局へ情報が行っていなかったらしく、役所の方たちが「誰だこいつら!?」という状態に陥っていたということらしいです。定かではありませんが...
ですが、こちら側に何か過失があったわけではなさそうでした。質問をされるでもなく、書類の提示を求められるでもなく、ただただ待つことになりました。

待っている間に他の日本人学生さんと話していたのですが、なぜだかアニメの話になりました。相手はなかなかコアなアニメファンだったらしく、明日からフランスのパリへ1泊旅行してまどかマギカの映画を見てくるとおっしゃっていました。フランスでも公開されるらしいのです。
その方の研究室の教授が、これまたコアなアニメファンらしく「フランスのアニメ事情のレポート待ってるから」と期待されているとのことでした。自分の大学にも似たような研究室があるので妙な親近感を覚えました。

そんな話をしていたら「この後アニメ会があるんだけど来ませんか?」とお誘いをいただきました。アニメ会ってなんなの?と思われることと思いますが自分もよく分かりません。主催者は、先日TeePartyでいろいろ仕切ってくれた日本語を話せるドイツ人の学生さんだそうです(以下Jさんとします)。

先日お会いした時はさわやかな好青年といった印象だったJさんですが、実は重度のアニメファンらしく、いろいろグッズを集めたりしているらしいです。海外のアニメファンというと、もっとプロっぽいイメージがありました。アニメキャラのTシャツを着ていたり、自分の世界に閉じこもっていたりするのではないかと思っていたのです。これはとんでもないステレオタイプだったようです。

で、そんな彼がアニメ好きを集めて鑑賞会をするらしいのです。こんな面白そうなイベントに参加しないわけにはいきません。ご一緒させていただくことにしました。

早速Jさんに連絡してみると、快く参加を受け入れてくれました。そんな話題もあったおかげで待っている間は別段苦痛ではなかったのですが、それから結局1時間以上待つことになりました。
全員が手続きを終えるまでに、通算2~3時間かかりました。14時に大学に集合して移動、役所に到着してすべてが終わったのは17時ころでした。
とはいっても、自分たちは座って待っている時間が大半でした。同伴してくれた学生さんが、あれこれ話を聞いたりして立ち回ってくれていたのです。面倒事をすべて押し付けることになってしまい、申し訳なかったのですが、自分一人ではどうしようもなかったような気がします。

終わった後、状況を説明してくれたのですが、先ほど述べたような感じでした。「役所め、いい加減にしろよ」というようなオーラ一杯で説明してくださったため、言葉はよく分からなくてもニュアンスは伝わってきました。

なんにせよ、とりあえず今日のところはこれでいいらしいです。ただ、この後本手続をする日程が、役所から指定される形になってしまいました。事前にオンライン上で予約していた日程よりもさらに一週間遅い日が指定されていました。なんだか不安になります。これはすべてうまく行ったとしても本当にギリギリになりそうです。

とはいえ、これ以上できることもないのでJさんと合流してアニメ会をすることにしました。時間も時間だったので、晩御飯はどうする?と話していたところ「じゃあ、母ちゃんに電話して人数分作ってもらうから僕の家で食べよう」という、非常にありがたいオファーをしていただきました。

出会って数日の相手の実家へ押しかけてご飯をご馳走になるなんて、日本でやったらちょっとした事件になりそうです。また、若者であれば友人と家族を引き合わせたくないと考えたりもしそうです。

家へ招く文化は日本にもあります。しかし、日本では相手は完全に“お客様”扱いで、団欒というよりは接待になりがちではないでしょうか。依然、家に遠い親戚がやってきたことがあったのですが、その際には父親は外交スイッチが入り母親をこき使って亭主関白を気取りだし、母親は母親でそれに応じて動き回るという非常に居心地の悪い空間が形成されました。晩御飯のすき焼きが不味く感じられたくらいです。普段とまったく違う役割を演じて来客を出迎えるというのは接待といった方がしっくりくる気がします。

他の家庭の来客対応がいかなるものか分かりませんし、「日本では○○だ」と一括りにできる文化は存在しないのかもしれません。したがって、厳密には「日本と異なる文化」ということもまた言えないのかもしれません。単に自分が知っているものと違うだけで、もしかすると日本でもJさんのような人付き合いをしている人たちもいるかもしれません。

とはいえ、自分にとってはすべてが異文化なのです。こちらに来てから人付き合いに関しては特に日本と違う雰囲気を感じます。それも、比較してこちらの方が居心地が良いのです。

また話が逸れましたが、そんなわけでJさん宅まで連れて行っていただきました。
家についたらJさんが「日本米があるよ!」と見せてくれました。「日の出」とデカデカと書いてあったのですが、一体どんな品種なのでしょう。イタリアで買ってきたということらしいです。

ご飯を作っていただいている間はJさんの部屋で遊んでいていいよとのことだったのでお言葉に甘えました。Jさんの部屋に入ると、早速フィギュアが飾ってありました。Steinsgateという作品のクリスというキャラクターだそうです。結構しっかりしたフィギュアだったので「高かったのでは?」という話になったのですが、Jさん曰く「Yes,but I have to get it」とのことでした。
しかも秋葉原で買ってきたそうです。なんという徹底ぶり。日本から何かそういう系のお土産を持って来ればよかったです。
アニメ会に誘ってくれた学生さんはそのあたりのことを心得ていたようで、JさんにSteinsgateのクリアファイルをお渡ししていました。Jさんはかなり喜んでいました。
体格のいいドイツ人がアニメのクリアファイルをもってはしゃいでいる様子は文字では表現できない何か平和なオーラを醸し出していました。

あとはYoutubeのJapanse Traditionに関する動画を見ていました。

例)すし
http://www.youtube.com/watch?v=0b75cl4-qRE

ご覧いただければわかるかと思いますが、真実の中にいくつかウソが混ぜられているという性質の悪いコントのような動画なのですが、日本に来たことのあるJさんには面白さが分かったようです。

ご飯はJさんのご家族と一緒にご馳走になりました。
前菜のスープに続いて、久しぶりの日本米です。カレーのような、何かドロドロしたものをかけて食べる料理でした。こうして書き起こすと不気味ですが、とてもおいしかったです。

ご家族はあまり英語が堪能ではないようでしたので、格好のドイツ語練習チャンス!と思い、いろいろ話しかけてみたりしました。こういうシチュエーションだと、自分の語学がダメダメだとわかっていても気楽に話しかけることができます。授業だと怖気づいてしまうことが多いのですが。

もどかしいのが、感謝を表す言葉が浮かばないことです。「ありがとう」とは伝えられても、例えば「おいしかったです」とか「ごちそうさまでした」とか、いろいろ状況に応じたバリエーションがあると思うのですが、これがパッと浮かばないのです。
せっかくなので、「ごちそうさま」にあたるドイツ語はありますか?とご家族の目の前でJさんに質問したうえで使ってみました。
「Danke für das Essen」
これで良いそうです。ただ、あまり一般的ではないようですが、言うならこんな感じだそうです。


食後はいよいよアニメ会でした。Jさんのおすすめのアニメを見るのかと思っていたら、「何かジャンルを選んで」といわれました。一人一つずつ選んだところ、それに合うアニメを探して見せてくれました。守備範囲の広さに驚きです。

今やアニメも日本文化の一翼を担っているようですから、一般教養として知っておいた方がいいのかもしれません。自分はそこまで詳しくなかったので、なんだか申し訳ない気持ちになりました。

アニメは2時間弱の映画で、不思議な話でした。オオカミ男を狩人の女の子が追いかけていたけどなんやかんやあってオオカミ男に惹かれていって云々というような話なのですが、展開が速すぎて話についていけませんでした。
Jさんも同様の感想を抱いたようで、「I love youでしめれば全て丸く収まるというのには驚かされた」といっていました。おっしゃる通りで。


というわけで、非常に盛り沢山な一日でした。平日にここまで色々できるとは思っていませんでした。授業が始まってルーチン化したと思っていた日々ですが、今日は刺激的でした。